東京地方裁判所 平成5年(ワ)3344号 判決 1993年10月26日
原告
本多大藏
被告
菱電運輸株式会社
右代表者代表取締役
村上卓彌
右訴訟代理人弁護士
吉澤貞男
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は原告に対し、二二二万二五〇〇円を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1 原告は、昭和四四年一〇月一三日、被告に雇用され、東京支店城南営業所に配属されていた。
2 被告は、昭和五〇年六月一八日、被告の従業員をもって組織された菱電運輸労働組合との間で、資格制度及び賃金制度に関する協定を改訂した(以下「本件改訂」という)。
二 争点
原告につき、本件改訂によって原告主張のとおりの改訂がなされたか否かである。
(原告の主張)
本件改訂は、給料について学歴資格制度を採用し、新たに短大卒及び大学卒を学卒給とし、この者の給料を改訂し、この差額分を支給するというものである。
したがって、原告は、短大卒であるから、本件改訂による差額分は、昭和五六年度で給与が一か月七〇〇〇円、一時金が七〇〇〇円の五・五か月の三万八五〇〇円、総合計一二万二五〇〇円、昭和五七年度で給与が一万円、一時金が一万円の五・五か月の五万五〇〇〇円、総合計一七万五〇〇〇円、昭和五八年度で給与が一万一〇〇〇円、一時金が一万一〇〇〇円の五・五か月の六万〇五〇〇円、総合計一九万二五〇〇円、昭和五九年度から平成四年度まで毎年昭和五八年度と同額の一九万二五〇〇円で総合計一九二万五〇〇〇円となる。
(被告の主張)
原告主張事実は否認する。
原告の主張は給与規定上の根拠を有しない。
短大卒という学歴が基本給に関わりをもつのは、新規卒業者における勤続給の特例としてだけであるから、勤続年数に何ら影響しない二部(夜間)卒業者は適用対象とされない。
したがって、原告は、中途採用者でありかつ、二部短大卒であるから、賃金制度改訂に移行した際、特例の適用とはされない。
第三当裁判所の判断
本件全証拠によるも、本件改訂によって原告主張のとおりの改訂のなされたことを認めるに足りる証拠はない。
なお、証拠(略)によると、次の事実を認めることができる。
本件で問題となっている資格制度及び賃金制度に関する協定の改訂の主な内容は、資格制度については、職種及び資格等級を見直し、管理職まで含めた職務系統別資格区分と資格等級昇格考課基準を明確にし、賃金制度については、賃金体系を変更して属人給と属務給との区分を明確にするとともに、計算方法を乗算方式から加算方式に変更したことにあり、このうち、賃金体系については、基準賃金を、改訂前は、本給、資格給、補正給及び生計手当によって構成されていたが、改訂後は、基本給、資格給、補正給及び生計手当によって構成することとなった。そして、基本給の一要素である勤続給は、原則として入社後の勤続年数によって決定されるが、就学したことによって被る勤務上の不利益を救済するため、特例として、「大学・短大等の学校新規卒業者の勤続給は、高卒後(一九歳)の通常就学年数を勤続年数とみなし算出する」と定められた。
このようなことから、就学と勤務とが両立し、勤務年数の面で影響を被らない場合(例えば、二部の大学、短大に就労した場合)には、特例の適用を受けないとされた。
原告にあっては、資格については、「現行資格の新資格移行基準」に基づき、昭和五〇年三月末現在の資格が四級一年次であったので、四級三年次に格付けされた。そして、基本給のうち、勤続給については、原告は、昭和四四年一〇月入社でその勤続年数は五年以上六年未満であったので、五〇〇〇円となり、原告の学歴は二部の短大卒であったので、勤続給の特例対象とはならなかった。
以上のとおりであるから、原告の主張は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁制官 林豊)